パニック障害の治療方法~薬物療法編~

タカシです。


今日のテーマは
「パニック障害の治療方法」です。


パニック障害の治療方法には大きく分けて
「薬物療法」と「認知行動療法」の2つがありますが
今回は前者の「薬物療法」に焦点を絞って
お話しを進めます。


パニック障害の原因は
脳の神経伝達物質の分泌異常にあると言われていますが
薬物療法は薬の力を使って
この分泌異常を改善させる、という治療法です。


なお、前回までの


パニック発作とは何か
パニック障害とはどんな病気か
パニック障害における「予期不安」と「広場恐怖」
パニック障害の原因は脳にある?


をまだお読みになっていない方は
これらも併せてお読み下さい。


パニック障害の薬物治療に使われるSSRIとは

パニック障害の治療に使われる薬はいくつかありますが
現在のところ最も多く使われているのが


選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」


と呼ばれる「抗うつ薬」です。


SSRIは文字通り「選択的に」「セロトニンの」
「再取り込みを」「阻害する薬」ということになります。


後述するように、SSRIが登場する以前は
三環系(四環系)抗うつ薬」という抗うつ薬が主流でしたが
これらに比べるとSSRIは効果の割には副作用が弱く
バランスの取れている点が特徴です。


セロトニンとは脳内の神経伝達物質で
「ノルアドレナリン」や「γ-アミノ酪酸」などと共に
パニック障害に深く関わり合いのあるとされています。


セロトニンの役割は「心身を安定させること」ですが、
パニック障害にはこのセロトニンの分泌不足が
大きく関係していると言われています。


(パニック障害とセロトニンの関係は
パニック障害の原因は脳にある?
という記事に詳しいです)


さて、セロトニンなどの神経伝達物質は
脳内に無数に存在する「神経細胞」の間に伝達され、
広がっていきます。


「神経細胞1→神経細胞2→神経細胞3→神経細胞4・・・」


という感じですね。


ここから少し難しい話しになりますが
神経細胞と神経細胞の間には「シナプス」と呼ばれる
継ぎ目のようなものが存在します。


つまり上記の流れを厳密に言うと


「神経細胞1→シナプス→神経細胞2・・・」


となります。


そしてこのシナプスも、正確には
前の神経細胞から神経伝達物質を受け取る
「シナプス後部」と呼ばれる部分と
後ろの神経細胞に神経伝達物質を伝える
「シナプス前部」という部分から成り立ちます。


つまり・・・


「神経細胞1→シナプス後部→シナプス前部→神経細胞2」


・・・というのが更に正確な流れです。


そして前の神経細胞から神経伝達物質を受け取る
「シナプス後部」には、神経伝達物質の受け口である
「受容体」(レセプター)があります。
そして後ろの神経細胞に神経伝達物質を受け渡す
「シナプス後部」には後ろの神経細胞の受容体が
吸収し切れなかった神経伝達物質を再取り込みするための口、
「輸送体」(トランスポーター)があります。


つまり神経伝達物質がシナプスに流れると
受容体から吸収されて次の神経細胞に運ばれたり
受容体が吸収し切れなかったものは輸送体が再取り込みして
再利用のために前の神経細胞に戻したりします。


ということは、次の神経伝達物質がシナプスに流れてくるまでは
シナプスの中の神経伝達物質は徐々に減っていくことになります。


体にとって必要な神経伝達物質が正しく分泌されていれば
体に異常が生じる前に
シナプスには十分な神経伝達物質が供給されるでしょう。


しかし神経伝達物質の分泌が上手く行かなくなると
シナプスの中に必要な神経伝達物質が行き渡らず
体の様々な場所に異常が生じることが考えられます。


パニック障害の人のセロトニンの分泌が上手く行かず
不足しがちであると言われているのは
厳密に言うとシナプス内のセロトニンが不足している、
セロトニン濃度が低い、ということです。



そこで「選択的に」「セロトニンの」
「再取り込みを」「阻害する薬」であるSSRIの登場です。


SSRIはあらゆる神経伝達物質の中で
セロトニンのみに働きかけます。


どのように働きかけるかというと
シナプス後部から放出されて
シナプス前部の受容体が吸収し切れなかったセロトニンを
シナプス後部の輸送体が再取り込みをして
前の神経細胞にセロトニンを戻さないように阻害、
つまり邪魔をします。


前の神経細胞にセロトニンが戻らない、ということは
シナプスの中に留まっている、ということになり
セロトニン濃度が高くなるわけです。


これによってパニック発作の発生が抑えられ
ひいてはパニック障害の改善に繋がることが
期待出来る、ということです。


これがSSRIという薬のメカニズムになります。


SSRIの歴史は意外に浅く
1988年にアメリカで認可された「プロザック」という薬が
世界で初めてのSSRIと言われています。
(プロザックは2015年現在日本では未認可)


日本国内では1999年になってようやく
「ルボックス」、「デプロメール」という
SSRIが初めて認可されました(両者の成分名は全く同じ)。


ルボックス、デプロメールに引き続き
2000年に「パキシル」、2006年に「ジェイゾロフト」
2011年に「レクサプロ」というSSRIが認可。
2015年時点で全部で4種類(5銘柄)のSSRIが
国内で流通していることになります。


この4種類は同じSSRIという括りでありながら
成分や効果効能、副作用が微妙に異なります。
そのため患者の症状に合わせて
最も効果が高いと思われるものを医者が処方します。


パニック障害の薬物療法に使われるSSRI以外の薬

現在パニック障害の薬物療法では
まずはSSRIが使われることが多いです。


しかしSSRIでは効果がない場合、
あるいはSSRIを飲むほどの症状ではない、
というような場合には
SSRI以外の薬を使うことがあります。


まずSSRIで効果がない場合や、
SSRIの副作用が強く出て
体に合わないような場合に使われるのが
三環系抗うつ薬」と呼ばれる薬です。


三環系抗うつ薬は、抗うつ薬の中では1番歴史が古く
1950年頃から使われています。
SSRIが登場するまでは、
うつ病やパニック障害の治療には
非常に多く用いられてきました。


三環系抗うつ薬はセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど
「モノアミン」と総称される神経伝達物質の再取り込みを阻害します。
SSRIがセロトニンの再取り込みのみを選択的に阻害するのに比べ
実に大ざっぱな作りになっていると言えます。


そのため効果は強力な一方で副作用が多く
現在ではSSRIなどの他の薬が効かない場合に限って使われます。


具体的な薬剤名として「トリプタノール」、
「トフラニール」「アナフラニール」「アモキサン」などがあります。


三環系抗うつ薬の後に、多少副作用が弱くなった
「四環系抗うつ薬」というのが登場しましたが
抗うつ効果が弱いということであまり普及はしませんでした。


次に、SSRIを飲むほどの症状ではないものの
日常生活に支障が出るほどのパニック発作がある、
あるいはSSRIに特徴的な胃腸系の副作用が嫌だ、
抗うつ薬を飲むのは抵抗がある、
というような場合に使われることが多いのが
「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」です。


ベンゾジアゼピン系抗不安薬は
神経伝達物質の1つ、γ-アミノ酪酸(GABA)に働きかけます。


γ-アミノ酪酸は興奮を抑えたり
不安を軽くする働きがありますが
ベンゾジアゼピン系抗不安薬はこの働きを強めます。
つまり「より不安を軽くする」ことになるわけです。


ベンゾジアゼピン系抗不安薬の特徴は
とにかく即効性があるということです。
SSRIは十分な効果が出るまでに約4週間程度、
三環系抗うつ薬に至っては約8週間程度掛かるのに対し
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は早ければ数十分で効きます。


そのためパニック発作が起きそうな時に
それを抑え込むための頓服薬として有効です。


ただしベンゾジアゼピン系抗不安薬は
比較的依存性が高いと言われています。
毎日飲んでいると薬なしではいられなくなり
やがて今まで通りの量だと効果が得られず
どんどん薬の量を増やすようになってしまったりします。


だからといって急に飲むのを止めると
今度はイライラ感が強まったりするので
コントロールするのが難しい薬です。
出来れば3ヶ月程度以内の服用に留めるのが望ましい、
とされています。


具体的な薬剤名として「リーゼ」「デパス」
「ワイパックス」「ソラナックス」
「コンスタン」などがあります。


また、SSRIの進化系として
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
というものも最近は出てきています。


パニック障害の原因は脳にある?」という
別の記事内でもご紹介しましたが
ノルアドレナリンは神経を興奮させる神経伝達物質です。
ノルアドレナリンによって私たちの体は緊張・興奮状態になり
血圧や心拍数が上昇、その結果として集中力や注意力が高まります。


ノルアドレナリンが過剰に分泌されてしまうと
いわゆる「ナチュラルハイ」のような状態が続き
パニック発作の原因になってしまいますが
逆にノルアドレナリンが不足していると
無気力や無関心・意欲の低下などに繋がり
うつ状態になってしまいます。


そこでSNRIはセロトニンだけでなく、
このノルアドレナリンにも同時に働きかけることによって
これらの再取り込みを阻害します。
シナプス内にセロトニンとノルアドレナリンが
不足しないようにしてくれるわけです。


注意が必要なのは
ノルアドレナリンの分泌が過剰、という場合は
逆に使ってはいけない、ということです。


2015年時点で国内で認可されているSNRIは
「トレドミン」「サインバルタ」の2つのみです。


以上、パニック障害の薬物治療について
SSRIを中心にご紹介してきました。


1つ1つの薬の効き方や副作用など
もっと深く掘り下げていきたいところですが
それは別の記事で詳しくご紹介したいと思います。


ここではパニック障害の治療方法に薬物療法があること、
薬物療法には一般的にSSRIが使われるということ、
この2つをまずはご理解いただければと思います。



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